「WリーグSUPERGAMES」鎮西学院女子参戦レポート Day2

―考える力養いもう一歩先へ

 WLEAGUE SUPER GAMES最終日は、3位決定戦で「U19日本代表」が「O22日本代表」に76-66で勝ち、決勝で「WリーグO26」が「WリーグU25」を82-76で退けて「最強世代」に輝いた。その開始前、鎮西学院高(長崎)は2戦目のエキシビションゲームに臨んだ。
 この日はスペシャルゲストとして、高校3年時に日本代表として選出されて以来、長く日本バスケを牽引した名PGであり、この後にアイシンウィングスで電撃復帰を果たした吉田亜沙美さんがスペシャルゲストとして長崎のゲームを見守った。これは、若き女性指導者とそのチームが国内トップのステージで全国クラスの強豪と対戦したその体験をフィードバックし、いずれ長崎全体の水準をハイレベルへ引き上げようというコンセプトに吉田さんが共鳴し、実現したサプライズだ。

 対戦相手の福島東稜高(福島)は、2021年にインターハイ、ウインターカップに出場するなど、鎮西学院高と同じく伸び盛りのチームだ。176cmの長身選手2人を擁し、この高さにどう対応するかがポイントになってくる。
 鎮西学院高はスロースタートが響いた前日の藤村女高(東京)戦の反省を生かし、序盤から積極的に攻めた。#8田﨑陽菜乃選手のドライブイン、#6桑原樹奈選手、#11平野碧梨選手の連続3点シュートなどで着実に加点。第1クオーター5分まで互角に競り合ったが、インサイドを徐々に支配されると、鎮西学院高が目指す走る展開を逆に相手に許して、最初の10分で10-29と大きくリードされた。

*記事中の所属・学年は全て2023年2月当時のもの

  •  その後は主将の#4三宅美桜選手が得点源となって仲間をけん引。25-46からの後半は、一時10点差まで追い上げ、終盤まで食らい付いたが、相手に傾いた流れを変えられずに70-88で試合を終えた。

 試合後、涙を流すメンバーもいて、74-82で敗れた藤村女高戦よりも悔しそうなチームの姿があった。2年生の#6桑原選手は「相手の方が身長が高かったのもありますが、リバウンドが取れなかった。でも、それを負けた理由にしていたら、全国では戦えません。小さくてもできたことがあったんじゃないかと思っています」と反省点を口にした。
 この3日間、アシスタントコーチとして帯同した3年生の後田紗希さんは、#7後田望結選手の姉で昨季まで主力を担っていた。後輩たちの2試合をベンチで見て「全国はそう簡単に勝てないと分かったんじゃないかと思います。リバウンドやルーズボールの徹底など、日々の小さな積み重ねを大事にしてほしいです」と励ました。

 そんな選手たちのもとへ、客席から試合を見届けた吉田さんと招聘アドバイザーの小畑亜章子さんがねぎらいに訪れた。吉田さんは「こういう経験は限られた人にしか与えられないチャンスだと思うから、それを忘れずにレベルアップして、いろんなことに挑戦して頑張ってほしいです。応援しています」とエールを送り、一人一人と握手を交わした。

  •  小畑さんも3日間を総括して「真面目さや謙虚な気持ちは忘れずに、今度は自分から深掘りして、考える力をつけていけるようになると、もっとステップアップできると思います。今回の経験をみんながアウトプットすることが、周りの方々への感謝の表現方法の一つです。これからも活躍を見ていきたいので、また機会があれば一緒にバスケットをしましょう」と期待を込めた。

―バスケを通じた人間づくり

 3日間のプログラムから、次につながるさまざまな収穫を得た鎮西学院高のメンバーと長崎の指導者たち。中でも、高校の全国舞台を知らない1年生からは新鮮な感想が相次いだ。

 #9松尾すず選手「エキシビションでは、初めてこんな大きな体育館でプレーができて楽しかったです。今回うまくいかなかったところを修正して、シュートを確実に決められるようになりたいです」
 #10中川舜音選手「普段は対戦できない相手と試合をして、いろいろな経験ができました。自分はインサイドも担当していますが、リバウンドが取れずに悔しかったので、次に生かしたいです」

 #12馬場心美選手「トップの選手たちは全員がリーダーシップを取っていて、見習いたいと思いました。これから、ディフェンスは誰よりもアグレッシブに、オフェンスも走ってシュートを決められるように頑張りたいです」
 #13内田真夏選手「プロの方々の練習や試合を間近で見られて、とてもいい刺激を受けました。自分も高い意識で練習しないといけないと思いました。これから、できることを思い切りやってチームに貢献したいです」

 今回、中学のカテゴリーから参加した長崎市立山里中の馬場薫里コーチ、諫早市立明峰中の峯このみ監督は、研修を受けて「競技を通じて人間性を磨く指導は間違っていない」とそろって再認識していた。馬場コーチは「日本のトップカテゴリーでも求められることは同じ。改めて、社会で活躍する人を育てたいと思いました。Wリーグの女性スタッフの皆さんと接して、日本の未来は明るいなと感じました」、峯監督も「この研修のおかげで、生徒たちに人間性、社会性、気配り・目配りがいかに大切かを伝える際、言葉に説得力を加えられます。ありがたい出会いや縁をいただいたからには、何とかして長崎でつなげていきたいと思っています」と、力をもらった様子だった。

―東京での学び長崎に還元を

  •  充実の3日間は終了したが、多くの参加者が口にしたように、この経験をチームや長崎に還元してこそ研修は完結したと言える。
     鎮西学院高の内野夏実監督は「憧れの選手たちと交流したり、試合を間近で観戦できて、子どもたちは夢を持つことができたと思います。私にとっても、今回の経験は一生の宝物になりました。これからの指導に必ず役立て、長崎のバスケットを盛り上げられるように努力していきたいです」と気を引き締めていた。

 主将の三宅選手も「この貴重な経験ができたのは、チームの一部のメンバーなので、今回参加した10人がプロの方々から勉強させてもらったことや、自分たちに足りないところを仲間に伝えて、チーム層をもっと厚くしたいです。これからに向けて、かなりのプラスになりました」と決意を新たにしていた。
これをきっかけに、子どもたちはどんな成長を見せてくれるだろうか。その波及効果が、長崎のバスケットボール界全体にも現れる日を楽しみに待ちたい。

  • 藤村女高の皆さんと

  • 福島東稜高の皆さんと

photo by HIDEO ICHIYANAGI

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