「Story」vol.12 平湯蒼藍 2

専修大学 経済学部2年 野球部
2016年度奨学生
 名門、専修大学野球部4番打者の座を入学当初から任されている平湯蒼藍(海星高校出身)にとって、3年生として迎える2018年は勝負の年になるだろう。
「先輩方からも3年生として過ごす期間は大切だと言われてきたし、自分の野球人生を左右する1年。1試合1試合が就活なので、今年で自分の人生が決まるという覚悟を持って、死ぬ気でやります」と今年にかける意気込みを口にする。
 将来の夢はプロ野球選手だと公言して憚らない平湯にとってみると、活躍しただけプロからの評価も高まり、ドラフト指名順位も上がってくる大事な1年だ。

今年を勝負の年と思っている

 2017年のドラフトでは、専修大学で共に汗を流した高橋礼選手が福岡ソフトバンクホークスから2位指名を受けて入団。身近な先輩がドラフト上位でプロ入りした事実は刺激となって然るべきだが、「高橋先輩もそうですが、ホークスが3位指名した増田珠(ますだしゅう・横浜高校卒)は長崎の後輩なので負けたくないです」と一足先にプロ入りを果たした年下へのライバル心も覗かせる。
 高橋選手はアンダースローの投手で同じ釜の飯を食べた先輩だし、先を越されたというコンプレックスにはならないだろう。しかし2学年下で高校からプロ入りした増田選手は長崎出身のスラッガーで外野手という共通点もある。子供の頃から嫌が応にも周囲から比較され、お互いに存在を認識していたという。大学を卒業する2年後には平湯も同じ舞台で勝負したいと強い気持ちを持つが、そのためにも今季の結果が大切となる。同じプロに入るのでも、ドラフト上位か下位では契約金と年俸も大きな差があれば、入団直後の待遇も違ってくるだろう。プロで良いスタートを切るためにも、ここで評価を上げて上位指名に繋げておきたい。
 平湯が自らの活躍をスカウトにアピールするためには、何を置いても先ずは2部から1部に昇格して神宮の舞台に戻ることだ。
「神宮で毎回試合ができるのと、地方球場でプレーするのとでは視線の質も量も全く違います」
 2部の試合にもプロのスカウトは視察に訪れるが、その数やスカウトが選手をチェックする真剣さは1部と大きく違う。
 大学進学後1年目で迎えた秋季1部リーグでは最下位に沈んだが、入替戦で劇的な勝利を納めて辛くも残留を決める。だが2年生の春季リーグでも最下位と振わず、遂には入替戦でも敗れ2部降格の憂き目となってしまった。1部復帰を目標に戦った秋季2部リーグでは惜しくも2位と入替戦の出場権を逃しただけに、3年目の春季リーグは2部優勝をあくまで通過点と定め、引き続き1部への返り咲きを目指に戦っていく。
「今年のチームは自分が入学した当時から1・2年生を中心に作ってきたチームなので、監督も今年を勝負の年と思っているはずですし、選手たちも同じ気持ちです。まずは春に(1部に)上がって、秋には(1部で)優勝して神宮大会に出ます」
 とはいえ、現在の東都大学2部リーグも甘くはない。全日本大学野球選手権大会を過去に4度も制した実績を持つ青山学院大学を筆頭に、同大会優勝2回の日本大学など名門・強豪・古豪がひしめき合っていて、制するのは簡単ではない。それは平湯も承知の上で、口にするのであれば相応の覚悟があってのことだろう。

試合を決められるバッターにならないと

 入学以来4番を任されてきた平湯は「昨春はほとんど仕事をしてない」とチームが2部に落ちた責任は自分にあるとしている。2年生春のシーズンは序盤から調子を崩して出場機会も安定せず、満足のいく結果を残せなかった。
シーズンの最後に1部最下位のチームと2部を優勝したチームとが戦い、勝ち超したチームが1部残留または昇格という入替戦に臨んだ対立正大の第3戦。2-5のスコアで迎えた8回表に平湯は同点に追いつく3点本塁打を放つも、9回表に1点をリードしたその裏で逆転を許してしまいサヨナラ負けを喫し、2014年以来の2部降格が決まった。
 平湯はチームに勢いを与える同点ホームランを打ったことよりも、その前の3打席で「4番らしくない、情けないバッティングをしてまった。入替戦でも良いところでホームランは打てたけど、試合に負けて、2部に降格してしまった」と悔しさを顕にする。そして何よりも「そもそも、リーグ戦で僕がしっかりしていれば入替戦に回ることもなかったはずです」と、誰が予想したであろうリーグ戦全敗から降格という悪夢に終わった昨春の結果を、4番の仕事を果たせなかった自分のせいだと、今も自らを責め続けている。
 
 そんな屈辱を払拭すべく断固たる決意で臨んだその年の秋季シーズンでは、出場した14試合で28度も出塁する。出塁率.444は堂々のリーグ1位だった。
 メジャーリーグで流行したマネーボール理論では、出塁率の高い打者が高く評価される。その基準から言えば、平湯は確かな選球眼をはじめとする持ち前のバッティングセンスを発揮して大活躍したシーズンだったと言うことができる。しかしその一方で、往々にして抱かれているであろう「自らのバットで得点を叩き出す強打者」という4番打者のイメージから見ると、長打率.446はやや物足りなさを感じる数字だ。無本塁打・打点3という成績も所謂「4番の仕事」を果したとは言い難い。
「四球で出塁しても、自分ではないなという違和感はありました。率ではなく、チャンスで必ず打つのが4番打者。試合の中で、ここぞというチャンスが巡ってくるのが4番なので、その1打席でどう決められるか、試合を決められるバッターにならないといけない。今の自分はそこで打ち切れていないので、本物ではないし、チームの勝ちにも繋がっていない。分岐点で結果を残せるバッターになりたいです」
 この春季シーズンは2部優勝、入替戦に勝利して1部復帰と共に、個人的には「最低でも3本塁打できないと満足できない」と3ホーマーを課題に挙げた。上級生になり「プレーでも言動でもチームを引っ張っていく」とチーム内での責任感もこれまで以上に増した平湯は、チームと個人、それぞれ別の目標達成を固く誓う。
 掲げた2つの目標をクリアできれば、子供の頃からの夢であるプロ野球選手の座に大きく近づくはずだ。

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