
長崎の高校生と中高指導者 女子バスケのトップに学ぶ
- 2021年東京五輪で、日本が銀メダルを獲得した女子バスケットボール。その国内“最強世代”を決める大会が、2023年2月11、12日の2日間、東京・国立代々木第二体育館で初開催された。
日本バスケットボール協会とバスケットボール女子日本リーグ(Wリーグ)が、各年代の代表強化の一環として企画。「WリーグSUPERGAMES ~4GENERATIONS~」というタイトル通り、「U19日本代表」「U22日本代表」「WリーグU25(25歳以下選抜)」「WリーグO26(26歳以上選抜)」の4世代がハイレベルな熱戦を繰り広げた。
この大会に特別協賛した松園尚己記念財団は、子どもたちが夢を持ってチャレンジする心を育む活動を続けている。今回も、長崎県の高校生がWリーグのトップ選手たちと交流したり、同じコートでエキシビションゲームをしたりして“本物”に触れる機会を提供。2021年のインターハイ、ウインターカップに出場した鎮西学院高女子バスケットボール部から1、2年生計10人が参加した。
*記事中の所属・学年は全て2023年2月当時のもの


- さらに、Wリーグも推進する女性指導者の育成を視野に、鎮西学院高の指揮を執る内野夏実監督をはじめ、長崎県の中高生チームの女性指導者4人を招いて研修の機会もつくった。招聘アドバイザーとして、元Wリーグのプレーヤーで現在は日本の男子プロバスケットボールリーグ(Bリーグ)三遠ネオフェニックスのアカデミー本部長を務める小畑亜章子さんが帯同。指導陣や選手たちが随時、小畑さんにアドバイスを求められる環境を整えた。
『Day before』

―「五輪銀」選手らと夢の交流
ビッグイベント開幕前日の10日、寒波に見舞われた東京は珍しく雪模様だった。代々木第二体育館では4世代別に練習が行われ、鎮西学院高チームと指導者たちは、その練習見学とWリーグの選手たちとの交流会に臨んだ。
鎮西学院高のメンバーは、今回の貴重な場をより有意義なものにしようと、学びたいことやWリーグの選手たちについて調べたことを事前にレポートにまとめて参加。2年生で副主将の松下美心選手は「私たちは小柄なチームなので、ハードなディフェンスからブレイクするスタイルを掲げています。プロの方たちと交流できる滅多にない機会なので、たくさん勉強して参考にさせてもらいたいです」と声を弾ませた。日本代表も世界を相手にすると高さはない。そこをどうカバーしているかを感じられるのは、鎮西学院高にとってアドバンテージになる。
一行が体育館入りしたころ、コートではU19日本代表が練習していた。高校3年生と大学1年生で編成されたU19日本代表は、鎮西学院高のメンバーに近い世代。生徒たちはメモを取りながら興味深そうに見詰めていた。
その後、WリーグU25、O26の順でコート入り。U25は東京五輪銀メダルメンバーの赤穂ひまわり選手(デンソー)をはじめ、同3人制日本代表の山本麻衣選手(トヨタ自動車)、馬瓜ステファニー選手(同)ら、O26は東京五輪で主将を務めた髙田真希選手(デンソー)やガードの町田瑠唯選手(富士通)、大黒柱として日本を支える渡嘉敷来夢選手(ENEOS)らが名を連ねる。活気あふれる練習に、鎮西学院高の内野監督は「トップ選手でも練習中にあれだけ声を出すことを、子どもたちも実際に見て感じてくれていると思います」と期待を込めた。
それぞれ30分の交流会は、最初にWリーグの選手たちと楽しくウオーミングアップした後、全体をミックスしたチーム編成でのハーフコートのミニゲーム、WリーグU25、O26対鎮西学院高のオールコートでのミニゲームを実施。高校生が好プレーを見せると、Wリーグの選手たちが大いにたたえて盛り上げてくれた。ゲーム後の質疑応答を終え、最後に全員で記念撮影。高校生たちは時間を惜しむように、Wリーグの選手たちにお土産を手渡したり、話し掛けたりしていた。
1年生の学年リーダーの田﨑陽菜乃選手は「今でも夢みたいな気持ちです」と交流会を振り返り、目を輝かせて練習見学の感想を語った。「きつい練習や試合でミスが出ても、みんなで励まし合っていた姿が印象的でした。私もガードとして、いい雰囲気がつくれるようになりたいです」


―経験豊富なコーチ陣の助言
招聘アドバイザーの小畑さんのコーディネートで語り合ったのは、主に選手育成について。長崎の指導陣の質問を、Wリーグのスタッフたちは真摯に受け止めて回答してくれた。質問の一つ、判断力やバスケIQを高める方法については「やっぱり他チームとの実戦が大事」「人間力を高める」「優先順位をつける訓練をする」「動きをシステム化しない」―など、さまざまな意見が挙がった。
ほかにも、チームづくりについては「チームのコンセプトをしっかり意思統一すること」「練習でも、今の練習がどこにフォーカスしているのか意識させるのは大事」「毎日のベッドメイクでもいいから、小さな成功体験を積み重ねること。物があるべき場所にあるかという気付きができるか。人が見ていないところでもきちんとできる、それが試合にも出る」「しゃべる機会つくって習慣化して、自分の言葉で表現できるようにする」―。トップレベルを知るスタッフたちの言葉は説得力があり、長崎の指導者たちも感銘を受けていた。


また、学校教育の中で競技の指導に当たる4人に向けて、大神アシスタントコーチは「人間的成長と勝つこと、二つのゴールを設定してみては」とアドバイス。ミーティングでの助言は中高生の指導で大事にされている要素も多く、その基礎基本が日本のトップカテゴリーにもつながっているとうかがえた。
前川監督は「私たちも幸せな時間を過ごさせてもらいました。自分たちの質問に対して寄り添い、親身に答えていただいてありがたかったです。これを長崎に持ち帰り、指導者としてどう落とし込めるのかが大事ですね」と有意義な意見交換会を振り返った。
たくさんの学びをインプットした高校生と指導者たち。さらに実戦で学びを深める『Day1』に続く。
photo by HIDEO ICHIYANAGI