特別講演会「トム・ホーバスの挑戦と革新 ~長崎の未来を創る~」

 バスケットボール男子日本代表ヘッドコーチのトム・ホーバス氏が、特別講演会「トム・ホーバスの挑戦と革新 ~長崎の未来を創る~」を3月8日に出島メッセ長崎で行いました。長崎県バスケットボール協会と松園尚己記念財団の共催で開催され、約200人のバスケットボール指導者らが参加しています。

「選手と指導者が互いをリスペクト」

 講演会は県内でミニバス-高校世代を指導するパネリスト8人とMCのドン・パーディー氏を交えたトークセッション形式で行われました。

 選手との信頼関係を築くためのコミュニケーションについて質問されると「僕は選手たち全員をリスペクトしています。逆に選手たちが僕をリスペクトしてくれないとそれは大変なことで、それが一番大きいと思います。コミュニケーションやリスペクトがないと選手は言うことを聞けない。(そのためには)短い時間でも一人ずつ選手と話すことです。僕はいつもやっています」と回答しました。

 選手がミスした際にどのようにプラスに転化するかについては、「ミスをしたことが選手にとって勉強にならないというのが一番よくありません。コーチが指摘するよりもチームメイト同士で指摘をしあえる文化を作ることです。(時には)怒るのも大事ですが我慢するのも大事。選手たちが楽しくやっていけるように」と選手同士が共にリスペクトし向上し合える環境作りを推奨。ホーバス氏はこれまでも、コーチングにおいてチーム内の雰囲気作りや選手を褒めることの重要性を訴えており、今回の講演でもそれらの考えを説いています。

前日には原爆資料館や平和祈念公園などを訪れ「悲しかったがあらためて歴史を勉強した」

 声が出ない・続かない・ハッスルしないという、どの指導者も頭を悩ませたことがあるであろう質問には「それはよくないですね。練習中はシャイガイ(=恥ずかしがり屋)を見たくないというイメージでやっています。(私のチームでは)トランジションディフェンスは声を出さないとよくないですから、声を出さない選手には『あなたの声が聞きたい』といって他の選手には黙ってもらう。ペナルティではなくて(チームには)自分の声が必要、大事(だと理解してもらう)。これはすごく効きますよ。面白い。メンタリティも変わるかもしれない」と具体的な指導例を示しました。

「指導者も自分のスタイルで挑戦を」

  •  トップレベルを目指す子供たちに向けてどういう言葉をかけるかという問いには、「自分が上手くなりたいという気持ちがないと上達しない。自分が『今日はもうちょっと上手くなりたい』『少し良くなった』とかそういう気持ちがあるならばどこまでも行けると思います。私が現役時代には試合後に鏡に映った自分に『ベストをつくしたか?』と問いかけ、答えが『はい』であれば寝ていた。そういう気持ちのある選手を探しているし、そういう選手はすぐにわかる」と述べました。

 最後に「自分の経験や自分のバスケットに自信があるのならそれを教えた方がいい。他人のスタイルを真似するのもいいけれど、自分の味も入れた方がいい。バスケットはいつも変化しているから、それが合っているか、結果を出せるか分からないけれど。勇気をもってやるべき」と指導者自身がそれぞれのバスケットボールに自信をもつことを主張。名将トム・ホーバスが獲得してきたバスケットボール哲学の根底に流れるチャレンジスピリットを語り、トークセッションを締め括りました。

「ダウンの時こそファイティングの気持ち」

  •  登壇した指導者のチームの代表として聴講した選手たちが「新しい視点を学びました」「チームワークの大切さをあらためて実感しました」「挑戦する大切さを胸に刻みました」「熱い言葉に心を動かされました」「バスケットがもっと好きになりました」「長崎のバスケをもっともっと盛り上げていきます」などお礼の言葉を伝えました。

 すると「負けている試合もヘッドダウンしないで、次のステップ!次のステップ!(アップダウンの)波は必ずあるから、ダウンの時のファイティングの気持ちが大事ですよ。(皆さんのことを)代表チームで見たいです。頑張ってください」とホーバス氏らしい熱いメッセージで応えました。

「次に会った時には成長した姿を見せます!また長崎に来てください」

  •  現役の代表ヘッドコーチによるリアルな言葉は、長崎のバスケットボール関係者にとって大きな刺激と成り得たのでしょうか。
     ともすれば奇跡的ともいえる東京五輪での女子銀メダル獲得、続いて男子を48年ぶりの五輪自力出場に導いたホーバス氏の貴重なコーチング哲学と経験談が、全国大会での勝利を目指す長崎の指導者らが選手を伸ばす革新の契機となり、その挑戦を後押ししていくことを願っています。

登壇パネリスト
松尾久史(長崎市立小江原小学校男女HC)、内野夏実(鎮西学院高等学校女子HC)、梅崎信久(佐世保市立日宇中学校男子HC)、大山泰史(佐世保工業高等専門学校男子HC)、田中佐和子(長崎西高等学校女子HC)、寺田祥(長崎工業高等学校男子HC)、山越翔陽(諫早市立御館山小学校女子HC)、森山世隆(純心女子中学校女子HC)

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