「FIBA 3x3 WS 2019 Tokyo」長崎ジュニアチーム参戦レポート Day2

  • プレゼンターを務めた表彰式で優勝したオーストラリアチームと
「Day 2」
 2日目、茨城アルボラーダも対応してくる中での2戦目を迎える。選抜チームは5人を選出したが、3x3は4人1チームで試合が行われる。初戦はベンチ外となった#1阿比留陽菜乃選手は、「昨日の試合は外のシュートが入っていましたが、最後は確率が下がってきていたので、もし自分が出たらその場面でしっかりカバーできるようにがんばろうと思いました」と見て学び、初戦に向かう準備をしていた。

女子:#1阿比留陽菜乃(長崎中央クラブ)、#2湯川凜(長崎中央クラブ)、#3藤山なずな(戸町中学校)、#5後田紗希(福石中学校)

「ゴール下を強く、確実にシュートを決めていくことを大神さんから教わり、試合でも生かせるようにがんばりました」と初戦の勝利に貢献した#5後田紗希選手も奮闘したが、女子の2戦目は10-21でノックアウト負け。勝ち越しには至らなかったが、攻撃的なスタイルを貫きチャレンジし続けた姿に、客席からは惜しみない拍手が送られた。
「練習の時よりも相手のディフェンスが厳しくて、そこからボールをカットされてしまったのは反省点です」と阿比留選手は敗因を挙げた。同時に、「ディフェンスでプレッシャーをかけることやゴールを見ながらドライブに行くこと、パスフェイクなどの工夫するプレーは5人制にも生かせると思います」と3x3を経験したことで、プレーの幅が広がるきっかけをつかんでいる。
 逆に余裕が見られたのは、男子の2戦目だった。はじめてコートに立つ#1馬場輝選手は「昨日出られなかった分、体力は余っていたので、みんなよりも激しくディフェンスをして、アグレッシブな展開から積極的に点数を狙って行きました」と先制点を奪う。その後も終始ゴール下への闘志溢れるアタックを見せ、得点だけでなく相手ディフェンスを引き付ける動きでチームに貢献していた。
 シュートが決まれば、ダンスで観客を盛り上げたのは#2谷俊太郎選手だ。「バスカン(※バスケットカウント=ファウルを受けながらもゴールを決めるプレー)を決めたらこのポーズをしようとか、みんなでいろいろと見せ合っていました」とパフォーマンスの準備にも余念がない。初戦よりも更にファンキーなプレースタイルに触発されたかのように、チームは試合終了まで止まることなく有機的に躍動する。伸び伸びとプレーした男子は、ノックアウトにこそ一歩届かなかったが20-14で2連勝し、何よりもプレーを楽しんでいた。

男子:#1馬場輝(小ケ倉中学校)、#2谷俊太郎(南山中学校・TREASURE'19メンバー)、#4片山海王(小ケ倉中学校・TREASURE'19メンバー)、#5西田真希(片淵中学校・TREASURE'19メンバー)

「大神雄子コーチ『この場所で挑戦してくれたことに感謝』」
 9月15日(日)と16日(日)の2日間、このエキシビションゲームに向けて大神氏から直接指導を得る機会があった。実際にU15長崎選抜チームの戦いぶりを見た大神氏は驚き、以下のように語っている。
「この大舞台の中で、(※難しい個人技である)まさかシャムゴットをしたり、まさかユーロステップをするとは思ってもいませんでした。このような場でも表現できたことは、記録よりも記憶に残ると思います。この体験をきっかけに、目標として目指す場所が日本代表やオリンピックになって欲しいと期待しています。中学生たちにとっては記録よりも記憶という言葉が一番合うというこの場所で、挑戦してくれたことに感謝しています」
 大神氏の教えやその思いを選手たちもしっかりと受け止めていた。「1on1を積極的に仕掛けていき、ディフェンスでもアグレッシブにプレッシャーをかけて、いっぱい得点を獲れるようにがんばりました」と2ポイントシュート(※5人制でいう3ポイントシュート。3x3は3ポイントシュートエリアの内側が1点、外側は2点とルールが異なる)を決めていた#3太田龍之介選手。「いっぱい経験を積んでもっとバスケットを知って、オリンピックに出たいです」と大神氏の期待通りに高い目標を掲げていた。
 世界トップレベルの選手が集い、そして日本代表はWリーグの選手ばかりの空間を共有できたことも刺激になった。#4森髙楓選手は「身長が高いし、力があるプレーばかりですごいと思いました」と海外のチームに圧倒される。また、普段からWリーグも見ており、憧れの選手が間近にいることも「うれしくてヤバかったです」。一番うれしかったことは、「大神さんにサインをもらえたことです」と興奮気味に話していた。その大神氏が今回のきっかけをくれたことで、「3x3をはじめて経験してみてすごく楽しかったので、今後もまた試合がしたいです」と魅了されはじめている。
 5人制と3x3はルールなどの違いはあるが、同じバスケットボールであり、「垣根がない」と大神氏は常に訴えている。「5人制で良いものは3x3で生かせますし、3x3で使えるプレーを5人制で生かすこともできます。プレーする機会や挑戦できる環境があればあるほど、選手が向上するためのひとつの経験となり、ひとつの自信につながります。そのきっかけが、今大会のどこかにあればうれしいです」というのが大神氏の思いであり、この大会の狙いでもあった。
 
「この舞台でできたことは、これからどんなところでも自分はやっていけるという自信になりました。ここでいろんな経験ができて、本当に良かったです」とは谷選手の談。本人は意図していた筈もないだろうが、しかし、突き詰めれば大神氏の意志はこの言葉に集束していくように思える。
 ここに大神氏がTREASURE'19キャンプで子供たちに送ったメッセージからマイケル・ジョーダンの言葉を抜粋して紹介しよう。
「挑戦することを恐れるな!」
「挑戦しないことを恐れろ!」
 彼らには再び3x3にチャレンジする機会が待っている。*11月17日(日)にJR長崎駅前かもめ広場で長崎県バスケットボール協会により初めて開催される3x3大会だ。ジュニアから社会人まで広い世代にわたり約80名20チームがエントリー中で、MCには福岡を拠点にフリースタイルバスケのシーンを中心に活躍する侍ボーラーズをキャスティングし、これまでバスケットに触れる機会のなかった人々にも、東京2020オリンピックに採用されたこの競技について、プレーする以外の楽しさも知ってもらおうと企画されたイベントだ。
 短い期間ではあったが濃密な時間を過ごした「長崎 Jr. 3x3 squad "TREASURE"」のメンバー達も、各々がそれぞれのチームに散って、今度はライバルとして激突することになるが、今大会で得た課題を克服し、さらに素晴らしいプレーを見せてくるはずだ。一連の"TREASURE"プロジェクトをきっかけに、長崎県から将来のオリンピアン誕生が今から楽しみである。
*11月の3x3大会についての詳細は長崎県バスケットボール協会のウェブサイトで案内される予定

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