「My reports 2019」松下彩奈

山口県立大学 社会福祉学部社会福祉学科 2年
2017年度奨学生

今の私が考える金融と経済

 私は、高校在学中に「金融と経済を考える」という小論文のコンクールで秀作を受賞しました。内容は、生活保護の実態についてでした。当時の私は、世間から捉えられる生活保護と生活保護受給者の実態にはどこかズレが有るのではないかと度々思うことがあり、小論文のテーマに起用しました。現在、私は社会福祉学部に所属しています。そこで、今まで知ることのなかった生活保護の実態について知ることや生活保護受給に至らない人がいることも知ることが出来ました。

 現在、私は松園尚己記念財団からの給付奨学金、日本学生支援機構から第一種(無利子貸与型)と第二種(有利子貸与型)の奨学金を受けて大学に通っています。このように多くの奨学金制度を受けなければならない理由の一つに、家族が生活保護を受給していることが挙げられます。
 生活保護を受けると最低限度の生活は保障されるものの、その分制約もあるため世間から捉えられているような良いものではないと思います。生活保護に対する考えは今も高校在学中に執筆した頃とあまり変わってはいません。ただ、私が強く思うのは誰しも何が起こるのか分からないということです。失職することもあれば、病気や事故などで障害を負うこともあります。その救済方法の一つに生活保護というものがあると思っています。だから、自分のことのように親身に考えるまでは至らなくても、どういう状況に至るかは分からないということを改めて考え、非難だけをすることが減っていってほしいと願います。
 多くの奨学金を借りている私から、これから同じように奨学金を借りる可能性がある人達に言えることは、貸与型の奨学金とは金額の差はあっても高校を卒業した直後に十代にして初めて負う借金の一つであるということです。大学に進学し、生活するには多額の費用が必要になります。高校では給付と貸与を問わず奨学金制度の利用を推奨されますが、借りるということは必ず返さなければなりません。最近では奨学金破産という言葉もあるようにリスクが伴うものです。本来、学びを深めたいという子供が何不自由なく学びを深め、社会に貢献していくということが理想であると考えますが、なかなかそうはいかないのが現状です。
 また、大学に行ってもあまり意味はないように主張する人もいますが、私はそう思いません。基本的に大学は全国から人が集まります。自分が今まで生活している中では得ることが出来ない視点や価値観などもあります。その中には、自分とは合わないような人もいると思いますが、そういう人たちとどう接し、妥協点を探していくのか学ぶことも出来ます。
 私は、大学に行くことを積極的に勧めているわけではありません。大学に行かないのも良いし、大学に行くのも一つの道です。私は、大学に来て多くのことを学んでいます。それらを生かして自分が目指している福祉職に就いた際、多くの人に伝えていくことが出来れば、私が今多くの奨学金を借りながら学びを深めている一つの意味になると思っています。
 松下さんは県立松浦高校を卒業後、山口県立大学の社会福祉学部へ進まれました。自身の体験を活かして苦境にある人々の支えになりたいと、福祉について学ばれています。所属するコーラスサークルでは副部長を務めながら、様々な問題を抱える個々人の救済を社会全体が担える明日の実現を目指し、実習や演習を伴う学業に勤しむ日々を忙しく過されています。

 2016年に全国からおよそ2500作品が集まった第14回「金融と経済を考える」高校生小論文コンクールで、自身の環境より得た知見から論理的に生活保護制度について問題提起した「生活保護の実態」が、優秀賞に選ばれたのは高校3年生の時。複雑な思いを抱えていただろうことは想像に難しくありませんが、コンプレックスや鬱屈した心に由るようなバイアスを感じさせることなく、ただ「そうであって欲しい」という切実な願いが込められていました。
 このようなご経験を踏まえて今回、松下さんには大学に進学してからもう少しで2年が経過するタイミングで、奨学金を給付・貸与されながら学ぶことの意義について、彼女なりのアンサーをお聞かせ願いました。

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