「My reports 2018」淺香智輝

大阪大学 基礎工学部 システム科学科 2年
2017年度奨学生

自主研究を通して学んだこと

 私は幼少期よりロボットが好きで、本を読んだり、電子工作を行ったりしながら、科学に触れていました。高校時代は科学部に所属し、この頃は未来のエネルギーに興味を持ち「バイオコークス」と呼ばれる人工石炭を作りました。バイオコークスは、生ごみ等を高圧化、一定温度で加熱し続けて作るのですが、この時には茶葉を原料として、温度を一定に保つ回路をプログラミングで制御して、圧力をかけて作りました。この実験は本来、大掛かりな装置が必要ですが、小型化して再現した事が評価されて県大会で優秀賞を獲得し、九州大会で発表させて頂きました。この時のプログラミングの作成が面白く、その後は人工知能(AI)や機械学習(AIのための技術)を学びたくなり、この分野の最先端の教授陣を有する、大阪大学の基礎工学部を目指しました。
 しかし様々な事情で、大阪での生活費や、金銭面の負担の多い工学系の学部への進学は、とても不安でした。その折、高校で松園尚己記念財団の事を知り、ご支援をお願いしたところ、私の熱意を認めて頂く事が出来ました。現在、生活及び研究に不安なく過ごす事が出来るのは、財団のご支援のお陰だと、日々、実感し感謝しております。
 入学してからは、座学だけでなく自主的に研究を行いたいと思っていたところ、大阪大学には、自主研究奨励事業という制度があることを知りました。これは学部・年次・研究内容を問わず、研究テーマが認められると、アドバイザー教員と研究予算がついて、約半年間、自由に研究する事が出来る制度です。私はこの制度を利用させて頂き、人工知能(AI)・ロボットについての研究を行っています。
 昨年度、大学1年次には、Microsoftが開発した人工知能(AI)のTayというチャットボット(自動会話プログラム)が、悪意のあるユーザーによって不適切な発言を学習してしまい、サービスが停止した事に着目しました。このような悪意のあるユーザーからの学習で発生する問題を防ぎ、善意のユーザーと区別して学習するプログラムを作成し、これを小さなロボットに学習させ検証するという研究を行いました。この研究は学部内の自主研究奨励事業研究成果発表会で、ありがたいことに最優秀賞に選ばれ、大学祭で学部代表として、総長や各学部長の先生方がいらっしゃる中、発表をさせて頂きました。

 また今年度、大学2年次では、睡眠学習をテーマに研究を進めているところです。人間のとる睡眠は、記憶と学習に対し重要な役割を担っている事が分かってきています。そこで、ロボットでも動作時にだけ学習させるよりも、さらに睡眠時(停止時)にもシミュレーションで学習させる事を考えました。これにより、ロボットのモータ等への負荷を軽減し、同時に学習の効率化を図れるのではないかという事を、多脚ロボットに運動学習をさせる事で検証を行っています。
 私は将来、人工知能(AI)関連の研究者になりたいと考えています。そのため、早期から実践的な研究を行う事が出来る自主研究奨励事業は、大変貴重な経験になっております。
学内選抜自主研究成果発表会で優秀賞を頂きました
 今振り返ると昨年度の実験中は色々と苦戦しました。例えば、プログラムを動作させる環境を全て自分で設定する必要があり、全てのコンピュータが正常に動くまで、何度もエラーを繰り返しました。ソフトウェアの開発者は外国人が多いため、日本語の資料が殆ど無く、英語で書かれた開発者のサイト等を参考にしながら、実験に至るまでに2ヶ月ほど調整を繰り返しました。ですが、この経験から、コンピュータの様々な仕組みを学ぶ事が出来、少し技術力も付きました。
 そのため今年度は昨年度に比べ技術的に高度な研究を行う事で、機械学習の勉強と、プログラミングスキルの向上を両立しようと考えています。また、大学卒業後には大学院へ進学し、留学もしたいと考えていますので、海外の学生と渡り合える様な技術力を身に着けたいと思っています。

 当面は、この2年間で身に着けた知識と技術をもとに、今まで、ロボットには不要とされてきた睡眠等の要素を、全て含ませて機械学習を行わせることが目標です。その上で、1つずつ要素を変化させることで、人工知能(AI)・ロボットに本当に必要な要素の検証をしていきたいです。
 淺香さんは県立諫早高校を卒業後、自身の志を叶えるべく人工知能やアンドロイドの研究では国内トップクラスの大阪大学 基礎工学部システム科学科へ進学されました。学ぶことに常に貪欲であり続け、課外でも自主的に学習や研究を行われる求道者然とした姿勢が評価され、2018年度は当財団の修学奨励賞を受賞しています。
「研究者となり、この分野で日本の発展を支えたい」
いずれ活躍のフィールドを世界に拡げることを視野に、自らの目指す道のその先も見据え、一歩また一歩と着実に歩みを進めています。

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