「OB-message 2018」井手彩記子

社会福祉法人 大分県福祉会 児童家庭支援センターゆずりは 心理士
長崎純心大学 人文学部 人間心理学科 卒業
2010年度奨学生(OB)

ゆずりはのようにこどもたちのために

  • 「事務スペース」普段はここで仕事をしています
 私は現在、児童家庭支援センター「ゆずりは」で子育て家庭からの個別相談に応じたり、子育てサロンの運営などの活動を行っています。仕事をしながら感じることは、たったひとりのこどもに、家族だけでなく学校や地域、社会全体のたくさんの大人が大切に大切に関わり、試行錯誤しているということです。自分が子供の頃は、知らないところで大人が奮闘しているなんて思いもしませんでした。

 小さいころから子供と関わる仕事がしたかったので、漠然と保育士や小学校教諭になりたいと思っていました。高校生になってからは子供の心のケアというアプローチを知ったことで、心理学という学問に興味を抱くようになり、心理学科のある純心大学への進学を志望したのです。頑張って試験に合格し、入学手続きの準備をしていると、両親から経済的に厳しい状況のため進学をあきらめて欲しいと相談されました。そのことを担任の先生に伝えると、突然の事態に困惑する私の話を親身になって聴き入れ、なんとか進学できるようにと制度や奨学金を調べてくれました。 そこで松園尚己記念財団の奨学金があることを知り応募することになったのです。急なことで書類提出期限まで時間がなく、先生方もさぞ大変だったであろうと思いますが、その時の私は、両親への怒りや悲しみ、周りへの羞恥心でいっぱいで、両親に酷い言葉を浴びせたりするばかりで、周囲の状況を考える余裕もありませんでした。
  • 「プレイルーム」
 現在の仕事では、経済的に厳しいご家庭の支援も行っているため、その当時の両親の気持ちや先生方の心配がよくわかるようになりました。進学が難しいとなればどうにかして打開する方法はないかと、私を含めたくさんの大人が必死になって考えているからです。もっと広く考えると、奨学金を支給する側の方々も応援してくれています。そのような方々がいなければ、私は進学を諦めざるを得なかったと思います。
  • 「相談室」対面カウンセリングはここで行います
 なんとか漕ぎ着けた大学生活は本当にあっという間でした。心理学を学ぶことはとても面白く、今では仕事となっていますが、私にとって学外での体験も貴重なものとなりました。なかでも東日本大震災のボランティアに携わったときは、とてもショックで悲しみや絶望を感じた反面、当事者ではないからこそできる支援があることを学びました。何より、ボランティア活動を通じて出会う人々はとても素晴しく、一期一会もあれば今でも交流がある友人もできました。また、学費や生活費を工面するため懸命にアルバイトをしたことで、自分の本当にしたいこと、そのためにしなければならないことを考え、取捨選択し、行動することの大切さも学びました。
 この様に、私が人として成長し社会を知る充実した四年間を過ごすことができたのは、たくさんの方々の理解や協力があったからなのだと本当に感謝しています。だからこそ、悩んでいる子供がいたら近くの大人に相談して欲しいなと思います。私も子供のころは気付きませんでしたが、皆さんが思っているより、大人は子供を大切に思って気にかけていますし力になります。また、何か心配なことがある大人も、ひとりで悩みを抱え込まず、周囲の人々と問題を共有し一緒に考えていくことも必要なのです。私も「ゆずりは」の葉のように、新しい葉が育つために力を注いでいきたいと思います。

*"ユズリハの名は、春に枝先に若葉が出たあと、前年の葉がそれに譲るように落葉することから。その様子を、親が子を育てて家が代々続いていくように見立てて縁起物とされ、正月の飾りや庭木に使われる。" [出典]Wikipedia
  • 「ゆずりは子育てサロン るんるん♪」に参加してくれている三人兄弟のこどもたちが協力して描いてくれました

 井手さんは県立清峰高校を卒業後、幼くして抱いた児童指導員になるという夢を叶えるために心理学を学ぶ道を選び長崎純心大学へと進学。子供たちの力になるべく教員免許や社会福祉士の資格を取得されています。また、ボランティア活動にも熱心に参加され、希望進路と関係する児童福祉だけではなく、2011年からは震災被災地へ何度も足を運ばれました。現在は大分県の児童家庭センター「ゆずりは」で心理士として勤務し、地域児童や親のあらゆる相談を受ける福祉のプロフェッショナルとして活躍中。子供たちの力になりたいという一徹な想いを貫き通すべく、彼女は手を差し伸べ続けています。

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児童家庭支援センター「ゆずりは」
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