30年の長きに亘って諫早高校陸上部を指導し、全国有数の強豪校に育て上げた松元利弘氏がこの春に定年を迎え勇退。藤永はその後任に抜擢された形だが、そのスタートは暗中模索、手探りの状態からであったと明かす。
心の育成――。これは恩師が大切にしてきたものでもある。
高校の部活動で子どもたちを預かる以上、オリンピックを狙える有望選手の育成ばかりに集中するのではなく、いずれ競技としての陸上から離れていってしまうであろう部員への指導も大切な仕事だ。部員たちの中で才能や意識に大きな差もあるが、それぞれのやる気をうまく引き出しながら成長を促している。
現役生活を終えた藤永は、指導者としてのスタート地点を、自らがアスリートとして生まれ変わった過去のターニングポイントに求めた。あたかも生命のリレーのごとく、恩師から受け取った襷に藤永佳子という変異を書き加え、次の世代の進化を導く道を選んだのだ。師弟で挑む夢の結晶が光を放つ、その姿を目にする日はそう遠くないかもしれない。