「卒業に寄せて」
産業医科大学 医学部医学科
杉森 千聖
この度は、松園尚已記念財団の奨学生として採用していただき、6年間ご支援いただきまして、誠にありがとうございました。
高校生の頃、少しでも他人の助けとなれるような仕事に就きたいという思いから医師の道を志しました。しかし大学受験を控えた高校3年生の頃、父の勤める会社と他社との合併が決まり、規模縮小のため、父は職を辞すこととなりました。当時父は50歳近い年齢でしたので、再就職先を見つけるのは難しい状況でした。
当時第一志望としていたのは県外の大学だったこともあり、当時の状況では一人暮らしをしながら医大に通うことは経済的に非常に厳しいものでした。大学進学が両親に金銭的に負担をかけてしまうことは理解していましたので、家計の助けとなるなるよう高校卒業後は私も就職すべきではないか、と医師の道をあきらめかけたこともありました。しかし、そのような厳しい状況の中でも、両親は医師になりたいという私の夢を尊重し、進学を後押ししてくれました。そんなとき、松園尚已記念財団の奨学生募集のことを伺い、是非お力をお借り出来ればと思い、期待を込めて応募いたしました。
医大生として過ごした6年間は、叱咤激励してくださる先生方や素晴らしい同級生、先輩後輩にも恵まれ、勉強をはじめ、様々な経験をさせていただくことができました。大学での講義、研究室配属で実験に励んだ日々、また1年間の大学病院での臨床実習で担当した患者さん一人一人のお言葉… 6年間の日々の中で積み重ねた経験は、何物にも代えがたい私の大切な宝物、医師としての新たなスタートを切ったところです。
医師としての現場の仕事は日々新しく学ぶことの連続で、責任も重く決して楽なものではありません。しかし、患者さん、またご家族の方々が笑顔で「ありがとう」と声を掛けてくださるとき、まだまだ未熟な身ながらもこの仕事を選んでよかったという思いを感じ、一日一日の仕事に励む原動力となっているように思います。
今こうして夢の第一歩を踏み出すことができたのも、松園財団の皆様のご支援に助けていただいたおかげだと、心より感謝しております。新米医師であるが故にまだ至らない点も多々ありますが、その分誠実さを大切にしながら、これからも多くのことを学び、地域の医療に微力ながら貢献できるよう日々努力を重ねていく所存です。
この度は本当にありがとうございました。
2014.11.7 更新